口腔粘膜ケア「入れ歯を支える粘膜を健康に保つ」口腔がんを予防する効果も

会津の歯医者 渡辺ゆうぞう歯科クリニックの「お口の相談室」

201602

入れ歯は口腔粘膜の支えがあってはじめて機能する

通常、咀嚼時に歯にかかる力は、歯根膜が受け止めて歯槽骨に伝え、体全体に分散させています。入れ歯(有床義歯)は、この力を、歯がなくなった部分の口腔粘膜と歯槽骨に肩代わりさせています。

口腔粘膜は、口唇、舌、歯肉(歯茎)、頬、口腔底(舌の下側の部分)の5ヵ所(図表1)に分類されます。薄く脆弱に見えますが、表面部分の細胞の重なりは皮膚の表皮より厚い、軟らかく丈夫な組織です。なかでも、歯肉粘膜は強靭で、時には体重に匹敵するかみ合わせの力に耐えて、歯根膜の代替機能を果たします。

入れ歯を快適に使うためには、それを支える口腔粘膜を健康に保つことが大切です。皮膚と同様に、加齢によって口腔粘膜も委縮し、弾力を失います。また、唾液の分泌も少なくなり、免疫機能も低下するため、粘膜は傷つきやすく、傷が治りにくくなっています。そういう状態の粘膜に、かみ合わせの力を負担させるわけですから、ぜひ口腔粘膜ケアにも気を配ってください。

口腔粘膜ケアのポイント

❶使い始める前に十分な咬合調整を
入れ歯を装着して、痛みがなく、効率よくかめる状態にもっていくことを、咬合調整といいます。咬合調整が十分でないと、かみ合わせの力が偏ってしまい、粘膜が圧迫されます。圧迫によって、血液の循環が滞ると、粘膜細胞が壊れて、皮膚の「床ずれ」と同じ傷ができます。粘膜の傷は、痛いだけでなく、後述する長引く炎症(口腔粘膜炎)のきっかけになることもあります。入れ歯は、歯科医師による十分な咬合調整を受けてから使用してください。

❷合わない入れ歯を使い続けない
歯根膜が受けるかみ合わせの力(力学的負荷)により、骨リモデリング(吸収と形成)がおこり、骨量が保たれるので、歯があるときは、顎の骨の形はあまり変わりません。
歯を失い、骨に力学的負荷が十分かからなくなり、また入れ歯による部分的な圧力が加わると、顎の骨の形は毎日少しずつ変化します。

加齢に伴って体はどんどん変化し、顎の骨と共に口腔粘膜の形と性質も変化しますので、使っているうちに、入れ歯は必ず合わなくなるものです。
合わなくなった入れ歯を無理して使い続けると口腔粘膜に傷を作ることになりますので、早め早めに調整を受けましょう。

❸歯磨きで粘膜炎予防
食事の後、そのまま放置すると、入れ歯や口の中で細菌が繁殖し、口腔粘膜炎(口腔炎など)を起こすことになります。粘膜炎になると、痛いため、バランスをこわすようなかみ方をするようになり、さらに粘膜炎を作る悪循環に陥りかねません。
食後の歯磨きには、ブラシで歯肉粘膜を刺激して血液循環をよくする効果もあります。
粘膜炎は口と入れ歯を清潔にして安静にしていれば、自浄作用で治癒します。

❹就寝中は入れ歯を外す
口腔粘膜を休ませ、血流を回復させるために。

入れ歯と口腔がんとの関係

口腔がんは、かみタバコなど、刺激物を長い間口に入れる習慣がある南アジアや中東などで多発しています。これらの状況から、口腔がんは、食習慣を中心とした生活習慣と劣悪な口腔衛星状態を背景に発症すると推測されています。日本では患者数は少ないのですが、増加傾向にあり、最近では年間約7000人が死亡しています。発症の中心は高齢期のため、今後増える恐れがあります。特に、入れ歯をお使いの方に注意していただきたいがんです。

口腔がん予防のポイント

どんながんも、前がん病変(まだがんではない段階の病態)から徐々に進行して、完全ながんに発育していきます。

口腔がんの前がん病変の代表的なものは「白板症」です。口腔粘膜が部分的に白くなる病気で、将来がんになる可能性がありますし、その一部にすでにがんが生じている可能性もある病変です(口内炎とは違って、白板症まで進行すると痛みがない)。

白板症以外にも、さまざまな前がん病変がありますが、それらに共通するのは「持続する炎症症状(痛かったり赤くなるなど)」や「治りにくい傷」です。
がん治療の原則は、早期発見・早期治療。口腔がんを早期に治療した場合の治癒率は、格段によくなることが知られています。症状が長期間続くときは、医師または歯科医師の診断を受けてください。

口腔がん予防のポイントは、喫煙と過度の飲酒を避けることと、粘膜の炎症を防ぐこと。
口腔ケアの4つのポイントが、口腔がんの予防にもなります。